メモ

140字に収まらなかったメモ書きです

映画MIDSOMMAR(ミッドサマー)のレビュー(ネタバレなしのつもり)

映画の中で誰が何をしてどうなったかは全く触れていないが、映画を観て思った考えを記載しているので、察しがいい人が読めば内容が分かってしまうかもしれない。


俺が公開前に海外レビューを読んでいて、鑑賞後に一番しっくり来たのは"もし自殺を考えている人間がこの映画を観た場合、その考えを後押しする可能性がある。"というもの。

 

別に生きているのが苦しいとか、つらいとか言っている人間に向かってこれを言うつもりはなくて。
自分はなぜ生きているのかよく分からないと疑問を持っている人間、自分の人生が無価値だと自覚している人間を対象にしている。

 

理由もはっきりしていて…
本映画に出てくるホルガという村では、個人が生きることより集団のために死ぬ方が意味がある、価値があるとする描写が多い。また、演出、設定によって登場人物も、観客である私たちもそれに疑問を抱かない。当たり前のように受け入れてしまう。

だから、"人生が無意味だと自覚している人間"が、"周囲の人間にとって価値がある死"を選ぶのを後押しする可能性があるんじゃないかと。後押しはしないにしてもそういう考え方もあるのだと当たり前のように思ってしまうのではないかと考えた。
これは別に自分がどうとかいう話でもなく、監督のインタビューや内容を精査した上でのロジカルな結論…のつもり。

 


この映画でのアリ・アスター監督のすごいなと思ったポイントは、正統派ホラーの構成をしておきながら一部を大きく変えて映画そのものの印象を変えているところ。

前作のヘレディタリー~継承~では、一般的なホラーでは霊的、悪魔的な存在を暗い影のようなもので描写しがちなところを、スポットの光で。むしろピーターの魂を暗い影のような描写で描いていた。
今作のミッドサマーでは、一般的なホラーでは確信に迫るほどに舞台が暗く、狭くなっていくところを白夜という設定を用いて核心、ラストに近くなるほどに舞台が明るく、開けていくのだ。

これが明るいことが、恐ろしい。恐怖の中のカタルシスを生み出している一因なのかななんて思う。